前日の鳥さんとの打合せで、鳥さんが新宿発5時50分の列車に乗るというので、僕も全ての目覚ましを5時にセット。念を入れて夕食にもナイトキャップにもアルコールを取らなかった。
それがいけなかったのか、2時、3時と目が覚め、その度にまだ早い、と寝なおすと気づいたら6時を過ぎていた。鳥さんの乗りましたメールも入っているし、リミットの6時44分発に乗るには駒込発26分に乗らねばならない。
明らかに間に合いそうもない状況で、1分で着替えて1分で家を出る。慌てたためグローブを忘れたことに気づくが戻る時間もなく、駅へダッシュ。そして確実に間に合いそうもなくなり、本郷通りでタクシーを拾う。
運転手には出来るだけ急いでもらったが、新宿駅に着いたのは無常にも46分だった。鳥さんには謝りのメールを入れるが、これで7時ちょうどのあずさに乗っても立川乗換えで奥多摩駅に着くのは8時51分。8時35分の東日原行きバスには間に合わず、9時33分のバスまで待たねばならない。初っ端から駄目駄目だ。
特急あずさの車中は、長野・松本方面への旅行者で混んでいて、かろうじて空いている席に滑り込む。ところどころに100L近いバックパックにスコップやら何やら雪山装備を着けた山男たちもいる。かれらは北アルプスへ向かうのか。気をつけてくださいよ。
立川まではあっという間なので、寝ることも出来ずに過ごし、立川駅のホームで朝食用のおにぎり2個とお茶の500mlペットボトル、行動食用に更に1個のおにぎりを購入。奥多摩行きの車中でいただく。
最初は街中を走っていた列車もいつしか奥多摩山中になり、御岳駅のころには、山肌だけでなく里の民家の屋根などにも雪が現れ始めた。
ようやく奥多摩駅に到着。一番で改札を出ると、OSPREYのEXOSを背後に置いたホーボージュン似のナイスガイが立っていた。初めてお会いする鳥さんだ。実はもっと文化系な想像をしていたのですが、適度な日焼けと髭がワイルドな風貌で、どこからみてもアウトドアマンでしたよ。
早々に遅刻を詫びると、トイレ前の水場で水をくみ、バス停で待つことに。そこで例のオスプレイのグラブバッグを受け渡してもらいました。小ぶりなポシェット大の大きさですが、特にBDのフラッシュとのコンビで威力を発揮しそうな気がします。ありがとうございました。
いつしかバスの列は10人強となるが、むかいの鴨沢方面に向かうバスは20人くらい。若き女性なども向こうさんにはいらっしゃいますよ。
やがてバスが到着。最初に乗り込むが、あせらずとも満席にならずに出発する。市街地を通り抜けると、川乗のゲートで一人おり、残り全員は終点の東日原で降りる。3名ほどは鷹巣山に向かうようで我々2名を含む6名が長沢背稜へ向かうよう。
トレイルへ
バス停のトイレで小用をたすと、まず我々が先陣を切ってスタート。100mほど来た道を戻ると左の山側にある登山道に取り付きます。数軒の民家を越えると、いよいよトレイルへ。
その名も横スズ尾根という松本の美しき女性を思わせる尾根は、最初の取り付きは奥多摩でお馴染みの急登。九十九折のスイッチバックを繰り返しながら一気に高度を上げていきます。
トレイルにはいって直ぐに出会った下山中の男性に聞くと、昨晩は一杯水避難小屋に泊まり、夜間の外気は-10℃。吹き溜まりでは雪は膝まであるものの、他は概ね脛程度とのこと。
別れを告げ、ピッチを上げると速すぎたのか鳥さんからストップがかかります。今日はゆるトレキャンなのに、ついいつものペースで入ってしまったようで反省。ゆるゆるペースで鳥さんペースにて登り始めます。
すると順番に後続が追い抜いていきます。まずは長沢背陵を西進し酉谷山まで向かうという男性が、その後は、順番に挨拶だけをした男性が計3人追い抜いてきます。
標高600m前後のバス停から一気に1000m超まで高度を上げると、今まで少なかった雪が常駐するようになり、また傾斜も緩やかになって主尾根筋に入り、スズ姉さんのご加護か鳥さんの足取りも楽になります。
東日原と一杯水、それぞれの方向をさしたこの標識がルート上にいくつかあります。ルートは一本しかないのだから、それぞれへの距離と現地点の高度を書いといた方が標識として親切というものではないでしょうか。
主尾根の東側斜面をひたすら歩み続けると、いつしか岩尾根となり、背に出たりすると、今までまるで無かった風が通り抜けていったりします。
1時過ぎ、スタートしてから3時間強で一杯水避難小屋に到着。小屋の中から声がしますが、天気も良いので先ずは外のベンチで昼食をいただきます。
最初に沸かした湯で粉末のチャイを入れ鳥さんにも暖まってもらい、次に醤油とんこつ棒ラーメンを。
ランチが済んで片付けると小屋を覗きに。するとあろうことか避難小屋なのに薪ストーブがあって先客二人が鉈を振るって薪をつくってるじゃないですか。僕らを追い抜いた4人のうちの後の2人ですが、にこやかな笑顔で迎えてくれて、なおかつこの暖かいストーブ!
現時点で午後2時、今までのペースから行くと登山道ルートの七跳山まで1時間40分くらいかかり、尚且つそこからルートを外れて道なき道を行かねばならない。おそらく順調にいっても到着は5時を過ぎるだろう、ということは日がくれるだろう、そんな無茶をするよりは、ゆるトレキャンなんだから背中のテントは残念ながら使わずとも、今晩はここにとまるのが正解だろう、という既に織り込み済みの計算を確定させて今晩の宿をここに決定。食事中の鳥さんに告げに戻り、先ずは自分の荷物を運びます。
備え付けのペッタンコなマットを広げシュラフを重ねるなどして2人の場所を確保し、一呼吸ついたところで、体力の余っていた僕は鳥さんにちょっとトレイルを走ってきます、と告げ、明日のトレイルを偵察しようと長沢背陵を西へ。避難小屋の背後に聳える3ツドッケの稜線が途切れたところで正面に七跳山と大平山、そしてその目的としている尾根筋を全て見ることが出来たので、ここまでで良しとしようということでストップし、かわりに登り口のある三ツドッケに登りピークを超えて避難小屋に戻ることに。
10分ほどで一の峰に到達すると345度くらいを見渡せる絶景ポイント。携帯に付属のカメラしかないのが悔やまれます。
石尾根
名栗方面
景色を堪能した後、二の峰、三の峰と辿って下山ルートに入ると、誤った踏み跡を辿りあらぬ方向に錯綜しながらなんとかルートに戻り、小屋に帰還。
すると3人組みさんがやってきていて自分達を入れて計7名に。おまけに飼い主からはぐれたらしい猟犬が小屋の周りをうろうろとしていました。皆で協力しながら裏山で倒木を拾い適度な大きさに切り分け、薪と炊きつけ用の小枝類を用意します。
夕刻前に外気温は-5℃ほどに。
やがて日が暮れていきます。
夕暮れを堪能すると小屋に入り、各組でゆるゆると夕食の用意。水が足りなかった鳥さんは小屋の外の雪をコッヘルで掬っては火に掛け、水に戻してはナルゲンボトルに、を繰り返してます。またおそろいのテントシューズに履き替え、雪に濡れたシューズをストーブ前で乾かしたり。
寒さを犠牲にしてもトーク用にということでマットとして持参したヘクサライトがまさかの活躍です。差し入れの山葡萄酒やベーコンブロックなどを堪能しながらヘクサライトでゆらゆらですよ。
酔いも適度に回ったころに自分達も夕食に。2食分のアルファ米を戻すと、無印のユッケジャンクッパ(レトルト)を温めアルファ米にかけて鳥さんにも振る舞います。えらく今日の行動をお気に召してくれた鳥さんが月曜も休みを取っているので、明日もどこかで一泊しようということになり、地図を見ながらルートの研究などをしたり。
やがて8時を過ぎ、一人、また一人と眠りにおちるころ、外ではいつの間にか猟犬が戻ってきていて可愛そうな鈴の音を鳴らしていますが、情をかけることも出来ずに無視をして、そして僕らも眠りにつきます。
(一日目終わり)